大阪地方裁判所 昭和43年(わ)3703号 判決 1969年12月15日
本店所在地
大阪市南区玉屋町二三番地
名称
丸和商事株式会社
代表者
代表取締役
川原満寿男
本籍
兵庫県尼崎市塚口町三丁目四一番地の一〇
住居
右同所
会社役員
川原満寿男
大正五年一月二五日生
右両名に対する法人税法違反、右川原満寿男に対する所得税法違反各被告事件につき、当裁判所は検察官生駒啓出席のうえ審理をして次のとおり判決する。
主文
被告人丸和商事株式会社を罰金一二〇万円に
被告人川原満寿男を懲役六月及び罰金一、〇〇〇万円に
各処する。
被告人川原満寿男が右罰金を完納することができないときは、金二万五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
被告人川原満寿男に対し、この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
第一、被告人丸和商事株式会社は、大阪市南区玉屋町二三番地に本店を置き、約束手形の割引その他金融業等を営むもの、被告人川原満寿男は、被告人丸和商事株式会社の代表取締役としてその業務を総括しているものであるが、被告人川原は、被告人丸和商事株式会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、被告人丸和商事株式会社の昭和三九年一〇月一日から昭和四〇年九月三〇日までの事業年度において、その所得金額が二六、二六〇、〇九七円、これに対する法人税額が七、四八〇、九〇〇円であるのに拘らず、公表経理上、貸付利息、手形割引料の一部を除外する等の不正行為により、右所得金額中二〇、〇九八、九六六円を秘匿したうえ、昭和四〇年一一月三〇日、大阪市南区南税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額六、一六一、一三一円、これに対する法人税額が二、〇九九、六〇〇円である旨過少に虚偽記載した法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の同事業年度分の法人税五、三八一、三〇〇円を免れ、
第二、被告人川原満寿男は、約束手形の割引をなして割引料収入を得るとともに、丸和商事株式会社より同会社の代表取締役として裏賞与等を得ていたものであるが、所得税を免れようと企て
一、昭和四〇年分の所度金額は四六、五一九、二四八円、これに対する所得税額は二一、九〇四、九〇〇円であるにも拘らず、約束手形割引料、裏賞与等の収入金を仮名預金口座に預入して秘匿する等の不正行為により、右所得金額中四一、〇七四、九二八円を秘匿した上、昭和四一年三月一五日、尼崎市尼崎税務署において、同署長に対し、同年分の所得金額が五、四四四、三二〇円、これに対する所得税額が六四八、二三〇円である旨過少に虚偽記載した所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税二一、二五六、〇〇円を免れ、
二、昭和四一年分の所得金額が二七、八四三、三八一円、これに対する所得税額一三、一九九、一〇〇円であるのに拘らず、右同様の不正の行為により、右所得金額中二三、〇五二、九一一円を秘匿した上、昭和四二年三月一四日、前記尼崎税務署において、同署長に対し、同年分の所得金額が四、七九〇、四七〇円、これに対する所得税額が六二四、五八〇円である旨過少に虚偽記載した所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税一二、五七四、五〇〇円を免れ、
三、昭和四二年分の所得金額が二三、七九一、九二九円、これに対する所得税額九、五八三、〇〇〇円であるのに拘らず、右同様の不正の行為により、右所得金額中一八、三七四、六三四円を秘匿した上、昭和四三年三月六日、前記尼崎税務署において、同署長に対し、同年分の所得金額が五、四一七、二九五円、これに対する所得税額八五、三〇〇円である旨過少に虚偽記載した所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税九、四九七、七〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示第一の事実につき
一、被告会社の登記簿謄本
一、被告会社代表者川原満寿男作成の収税官吏あて昭和四三年一〇月二一日付証明書(被告会社の定款)
一、被告人川原満寿男(被告会社代表者)の当公判廷における供述
一、南税務署長作成の同年一〇月一八日付証明書(被告会社の昭和四〇年一一月三〇日付法人税申告書写、被告会社の昭和四一年三月二二日付南税務署長あて追加所得確認書写、同年三月三一日付法人税更正を決定決議書写並びに同日付同税務署長の更正決定「法人税額等の更正および加算税の賦課決定通知書」写)
一、株式会社協和銀行心斉橋支店長(昭和四三年九月一九日付)、株式会社三和銀行生野支店長(同年六月二五日付)、日本貯蓄信用組合今里支店長(同日付)作成の収税官吏あて各確認書
一、川原正義の検察官に対する供述調書(同人作成の商品〔手形〕不渡手形貸付金一覧表、裏勘定〔犯則所得〕損益計算書、同貸借対照表〔期首、期末分各一枚〕、説明書添付)並びに同人の収税官吏あて供述書(九通)
一、収税官吏小森康有作成の昭和四三年九月四日付、同月一四日付、同月三〇日付各調査書並びに同人作成の同年一一月一八日付調査資料と題する書面
一、被告人川原満寿男の検察官に対する同年一一月一四日付、同月一五日付、同月一六日付(二通)、同月二〇日付(昭和三九年一〇月一日から昭和四〇年九月三〇日事業年度分の法人税修正申告書、府民税、事業税修正申告書、市民税修正申告書、上記法人税の納付書、領収証書、府民税〔二通〕、事業税の各領収証のそれぞれ写添付)各供述調書
一、押収してある諸勘定明細簿一綴(自昭和39年10月1日、至昭和40年9月30日。昭和四四年押第七七〇号の一六)、金銭出納帳一冊(同号の一〇)、営業日報一綴(同号の一二)、現金預金現在高綴一綴(昭和三九年度、同号の一三)、銀行勘定帳一冊(同号の一一)、固定資産台帳二冊(同号の七の一、二)、金銭出納帳一冊(ノート、同号の一七)
同第二の一ないし三の全事実につき
一、被告人川原満寿男の当公判廷における供述
一、収税官吏杉岡啓司作成の昭和四三年一〇月三〇日付、同年一二月三日付各調査書
一、収税官吏奥野猛作成の同年一一月三〇日付再割手形調査てん末書
一、左記の者の大阪国税局の照会に対する各回答書(いずれも「株式会社」を省略)
三和銀行本店営業部(二通)、生野、難波、福島、築港、堂島、桜川、中之島、大和田、歌島橋、平野南口、上町、阿倍野橋、野田各支店
大和銀行難波、南森町、三宮、久太郎町、片町、高槻、北浜、阿倍野橋(二通)、三国(二通)、柏原各支店
富士銀行備後町、難波、四ツ橋、九条、東大阪各支店
住友銀行杭瀬、貝塚、川口、大阪駅前、鶴橋、道頓堀、上町各支店及び本店営業部
三井銀行神戸、御堂筋、船場、阿倍野、天六、西田辺、梅田各支店
日本勘業銀行梅田、大阪駅前、天六、九条、西野田、船場、大阪各支店
神戸銀行三国、南野田(二通)、茨木、駒ケ林、萩ノ茶屋、梅田各支店
三菱銀行九条、出町、河原町、鉄鋼ビル、上六(二通)、尼崎各支店
協和銀行堺、心斉橋、兵庫、森小路各支店
東海銀行小岩、東京、京橋、今里各支店
第一銀行船場、本町、難波各支店及び本店営業部
三井信託銀行難波、日本信託銀行大阪各支店
大阪銀行(大正通、堺、今里、船場)、京都銀行(本店営業部、大阪)、北国銀行(大阪)、十六銀行(大阪)、埼玉銀行(大阪、二通)、鳥取銀行(大阪)、伊予銀行(大阪)、大分銀行(臼杵)、池田銀行(淀屋橋)、滋賀銀行(本店営業部)、足利銀行(大阪)、山口銀行(大阪)各支店(但し「本店営業部」を除く)
相互信用金庫(西淀、我、船場)、大阪中央信用金庫(日本橋)、摂津信用金庫(芥川)、枚方信用金庫(寝屋川)、大阪市信用金庫(城東)各支店
近幾相互銀行(梅田、豊中、高槻)、福徳相互銀行(城東、深江、岸和田)、幸福相互銀行(難波)、和歌山相互銀行(天王寺)各支店
一、大阪第一信用金庫田辺、城東各支店長、三和銀行生野、南各支店長(いずれも昭和四三年六月二五日付)及び同銀行南支店岡本章彦(同年八月七日付)作成の収税官吏あて確認書各一通
一、川原正義の昭和四四年二月二六日付供述書
一、被告人川原満寿男の検察官に対する昭和四四年二月一七日付、同月一九日付、同月二一日付、同月二二日付各供述調書並びに同被告人作成の収税官吏あて確認書九通(一〇通のうち、昭和四三年一一月一八日付「三品取引損について」と題する分を除く)
一、押収してある債権期日簿一冊(昭和四四年押第七七〇号の一八)、財産明細書一綴及び四枚(同号の一九及び二〇)、西出豊受領控一冊(ノート、同号の二三)、商業手形記入帳兼依頼人元帳(西出豊分八枚、同号の二九。小南泉分五枚、同号の三〇。中岡豊吉分三枚、同号の三一。小南泉分一綴、同号の二五)、普通預金元帳一枚及び四六枚(同号の三三及び三四)、割引手形記入帳兼依頼人元帳(小南泉分二枚、西出豊、中岡豊吉分各一枚、同号の三七ないし三九)、預り金台帳一冊(ノート、同号の二一)、定期積金元帳三枚及び二枚(同号の三二及び四〇)、諸勘定明細簿一綴(自昭和39年10月1日至昭和40年9月30日、同号の一六)、大学ノート一冊(同号の九)
右の外
判示第二の一の事実につき
一、大蔵事務官作成の昭和四三年七月一三日付証明書(被告人川原満寿男の昭和四〇年分所得税確定申告書写)
一、押収してある割引手形記入帳一冊(同号の一)、手形受払帳一冊(同号の一四)、商品手形帳一綴(同号の四)、諸勘定明細簿二綴(「自昭和三九年一〇月一日、至昭和四〇年九月三〇日」「自同年一〇月一日、至昭和四一年九月三〇日」各一綴。同号の五、六)、代金取立手形記入帳二冊(同号の二六、二七)、代金取立手形取次記入帳一冊(同号の三五)
同第二の二の事実につき
一、大蔵事務官作成の昭和四三年七月一三日付証明書(同被告人の昭和四一年分所得税確定申告書写)
一、押収してある割引手形記入帳二冊(同号の二、一五)、手形受払帳(同号の一四)、諸勘定明細簿一綴(自昭和四〇年一〇月一日、至昭和四一年九月三〇日、同号の六)、勘定元帳一綴(同号の八)、代金取立手形記入帳二冊(同号の二七、二八)、代金取立手形取次記入帳二冊(同号の三五、三六)
同第二の三の事実につき
一、大蔵事務官作成の昭和四三年七月一三日付証明書(同被告人の昭和四二年分確定申告書与)並びに同被告人作成の収税官吏あて「三品取引損について」と題する確認書(同年一一月一八日付)
一、押収してある割引手形記入帳三冊(同号の二、一五、二二)、勘定元帳一綴(同号の八)、諸勘定明細抜萃一綴(自昭和四二年一〇月一日、至同年一二月末日。同号の二四)、代金取立手形記入帳一冊(同号の二八)、代金取立手形取次記入帳一冊(同号の三六)
(法令の適用)
法律に照らすと、
被告人川原の判示第一の所為は法人税法第一五九条第一項に、同第二の一ないし三の各所為はいずれも所得税法第二三八条第一項に、各該当するところ、判示第一の罪については所定刑中懲役刑を選択し、判示第二の一ないし三の各罪についてはいずれも所定刑中懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第二の一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、同被告人を懲役六月及び罰金一、〇〇〇万円に、
被告人丸和商事株式会社については、被告人川原の判示第一の所為は同被告会社の業務に関してなされたものであるから、法人税法第一六四条第一項(第一五九条第一項、第二項)により所定罰金額の範囲内で同被告会社を罰金一二〇万円に
各処し、
被告人川原が右罰金を完納することができないときは刑法第一八条により金二万五、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置することとし、なお、同被告人に対し、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 矢代利則)